まず最初に、非常に単純な拡張モジュールを作成してみましょう。この拡張モジュールは、 パラメータとして受け取った整数値をそのまま返すというだけの関数を実装しています。 ソースを 例46-2 に示します。
これは、PHP モジュールとして動作する完全なコードです。 ソースコードについてはあとですぐに説明しますが、 その前にまずビルド方法について説明しておきましょう (API についての議論の前に、とりあえず実際に動かしてみたいという 短気な人たちのためです)。
注意: この例のソースは、PHP 4.1.0 以降に含まれる Zend の新機能を使用しています。 PHP 4.0.x ではコンパイルできません。
モジュールをコンパイルするには、基本的に 2 種類の方法があります。
ext ディレクトリ内で、 提供されている "make" 機構を使用します。 これは、動的ロードモジュールを作成することも可能です。
ソースを手動でコンパイルします。
2 番目の方法は、(何らかの理由で) PHP の完全なソースツリーを もっていない、すべてのファイルに対するアクセス権限がない、 あるいは単にキーボードと戯れていたいなどといった人たちにお勧めです。 これらはどれもめったにないケースではありますが、 この文書を完全なものにするためにこちらの方法についても説明しておきます。
Make を使用したコンパイル. サンプルソースを標準的な仕組みでコンパイルするには、 PHP ソースツリーの ext ディレクトリ以下に サンプルのディレクトリをコピーします。 それから buildconf を実行すると、 新しい拡張モジュール用の適切なオプションを含む configure スクリプトが作成されます。 デフォルトでは、すべてのサンプルソースは無効になります。 そのため、この作業でビルド手順が破壊されてしまう恐れはありません。
buildconf を実行すると、configure --help の結果に以下が追加されます。
--enable-array_experiments BOOK: Enables array experiments --enable-call_userland BOOK: Enables userland module --enable-cross_conversion BOOK: Enables cross-conversion module --enable-first_module BOOK: Enables first module --enable-infoprint BOOK: Enables infoprint module --enable-reference_test BOOK: Enables reference test module --enable-resource_test BOOK: Enables resource test module --enable-variable_creation BOOK: Enables variable-creation module |
先ほど 例46-2 で示したモジュールは、 --enable-first_module あるいは --enable-first_module=yes で使用可能になります。
手動でのコンパイル. モジュールを手動でコンパイルするには、以下のコマンドを実行しなければなりません。
モジュールをコンパイルするためのコマンドでは、コンパイラに対して 位置独立なコードを出力するように指示しています (-fpic は省略できません)。 また、定数 COMPILE_DL を指定することで、 モジュールのコードを動的ロード可能なモジュールとしてコンパイルするようにしています (上のテストモジュールではこれをチェックしています。これについては後で説明します)。 これらのオプションに続いて、ソースファイルをコンパイルするために必要な 最小限の標準インクルードパスを指定しています。注意: サンプルのインクルードパスは、すべて ext ディレクトリからの相対パスです。 別の場所でコンパイルする場合は、それに応じてパスを変更してください。 必要なのは、PHP ディレクトリおよび Zend ディレクトリ、そして (必要に応じて) モジュールの存在するディレクトリです。
リンク用のコマンドも、動的モジュールとしてリンクするためのごく平凡なものです。
コンパイル用のコマンドに最適化オプションを含めることもできますが、 この例では省略しています (しかし、いくつかのオプションは 先に説明した makefile のテンプレートに含められています)。
注意: 手動でのコンパイルおよびリンクで PHP に静的モジュールとして組み込む手順は、非常に面倒なものとなります。 そのため、ここでは扱いません (これらのコマンドをすべてタイプするのは効率的ではありません)。